今回の記事では、ヘーベルハウス(旭化成ホームズ)に使われているへーベル板と、積水ハウスの1、2階建てモデルに用意されているダインコンクリート板について、色々な観点から超私的に分析していきます。
(ちなみに、積水ハウスの3、4階建てモデルにはシェルテックコンクリートという中空コンクリートが用意されているようですが、そっちの場合でも参考になる記事だと思います。)
【外壁比較】ヘーベル板 VS ダインコンクリート【超私的分析】
私の結論は「へーベル板」です
早速結論ですが、理に適っているのはヘーベル板 だと思います。
と言っても、どちらの素材もメリット・デメリットがありますから、どういう意図でその素材を使用するかが重要だと考えます。
①耐震、②強度、③断熱、④遮音、⑤防水・調湿の5つの観点から比較し、私がなぜへーベル板推しなのかをご説明していきますね。
5つの観点で比較
へーベル板とダインコンクリートを比較して、
どちらがいいんだろう? と分からなくなってしまう方、
どちらも気泡コンクリートという部類なので、まるで同じ性質のものを比較するように錯覚してしまうんだと思いますが、性質はかなり異なります。
特に、積水ハウスの場合はダインコンクリートとシェルテックコンクリートのように違いがわかりにくい外壁が用意されているので、簡単に説明しておくと以下のようになります。
- へーベル版は純粋なALC(軽量気泡コンクリート)
- ダインコンクリートはコンクリートとALC(軽量気泡コンクリート)の中間
- シェルテックコンクリートは肉抜きして軽量化を図ったコンクリート
①耐震
耐震性能を語る上で欠かせないのが「重さ」です。
まずは、それぞれの素材の重さを比較してみます。
- へーベル板(ALC): 600(550~650)kg/㎥
- ダインコンクリート:1,100(1,000~1,200)kg/㎥
- 鉄筋コンクリート :2,300 kg/㎥
比重に関しては、ALCが0.6、鉄筋コンクリートが2.45ですので、そこから整合的な質量を求めております。
但し、これでは1立方メートル当たりの重さになってしまいますので、それぞれを縦・横:1メートルの外壁板とした場合の重さに換算します。
- へーベル板(ALC): 45 kg(縦1m×横1m×壁厚75mm)
- ダインコンクリート: 66 kg(縦1m×横1m×壁厚60mm)= ALCの約1.5倍重い
- 鉄筋コンクリート :345 kg(縦1m×横1m×壁厚150mm)=ALCの約7.5倍重い
ちなみに鉄筋コンクリートだと標準的な壁厚が150mm厚ですので重さの差は半端無いすね。と言っても、壁式鉄筋コンクリート造は壁が構造躯体(=骨格)且つ洋服の役割になりますが、鉄骨造の場合は鉄骨が躯体(=骨格)で外壁が洋服の役割です。
そして本題です。
建物に作用する地震力の構造計算は、建物の自重の 20% の水平力を地震力として作用させて計算します。なので、建物の重さが大きくなるほど、横から加える力を大きくして構造計算する必要があります。
➡建物の自重が重いほど地震力の影響を受けると意味です。軽い家ほど地震の影響を受けないということですが、経験則的にも何となく分かりますよね。
つまり、ダインコンクリートはへーベル板(ALC)に比べて地震の影響を1.5倍強く受ける(大きく揺れる)ということです。
1.5倍なら大したことない?
例えば耐震等級3は耐震等級1の1.5倍の強度です。平たく言えば、それくらいの差があるということです。
なので、躯体(骨格)が同じ鉄骨造構造ならば、外壁は軽い方が有利です。
②パネル強度
基材の強度に関して、圧縮強度(単位面積あたりの力)という考え方があります。
ダインコンクリートは、12.7N/m㎡です。
どれくらい圧縮に強いかというと、10cm×10cmのダインコンクリートの上に、13トンの重りを乗せても耐えられるという強度らしいです。
一方、ALCは3.9N/m㎡なので、強度はダインコンクリートの3分の1弱といったところですかね。
パネル強度はダインコンクリートに軍配が上がります。
③断熱
それぞれの建材の熱伝導率(=熱が伝わる速さです)を比較してみましょう。
素材 | 熱伝導率 | 同じ断熱性能の必要厚 |
コンクリート | 1.60 W/mK | 47 cm |
ダインコンクリート | ? | ? |
へーベル板(ALC) | 0.17 W/mK | 5cm |
比重からすればへーベル板の倍の重さなので、断熱性能は半分程度かなと思います。最低でも9cm超の厚さは必要かなと。
しかし、ダインコンクリートは重いのでへーベル板よりも厚さを薄くしています。
へーベル板は、コンクリートと比較すればおよそ9分の1の薄さで同等の断熱性能となりますので、そういう意味では断熱性能は高いです。
しかし断熱性という面では、断熱材はへーベル版の更に4倍から9倍くらいの断熱性を有していますので、結局は断熱性を求めるのであれば断熱材をどれくらい入れるかに掛かっています。
とは言え、構造躯体の鉄骨は鋼材なので熱に弱いですから、適切なヒートブリッジ対策が可能なへーベル板の方が理に適っていますかね。
積水ハウスは「900℃で加熱しても裏側が100℃に留まる」という表記しか見つかりませんでした。 一体全体、何分間加熱したんでしょう・・・。
別に、積水ハウスさんのアンチ記事を書きたい訳では無いですが、あまりにもデータ公開が無さすぎるというか、重要な部分が全く載ってないので、厳しめに評価せざるを得ませんよね。
④遮音性
遮音性は重さに比例します。
遮音性については、積水ハウスにもへーベルハウスのHPにも具体的な数値の記載はありませんでしたが、旭化成建材HPやその他のデータを元に、壁へーベルの遮音性能は-30~40db(デシベル)程度と想定されます。
コンクリート壁が凡そ-50dbと言われていますので、ダインコンクリートはこの間くらいになるかと思います。
遮音性はダインコンクリートの方が上です。
⑤防水・調湿
ダインコンクリートもヘーベル板もどちらも防水性は高くないです。なので防水処理が必要です。
調湿性はへーベル板の方が上です。でも、みなさんはヘーベルハウスの矛盾にお気づきですか?
そもそもネオマフォームで内断熱しているのにへーベル版で調湿出来るのか?
ヘーベルハウスの営業マンはこれ見よがしにへーベル板の調湿性を推してきますが、ネオマフォームの吸水量は1.7g/100c㎡(JIS規格5.0/100の1/3)なので、防水・防湿性はすこぶる高いです。
なので、
- 調湿力が高いと説明してくれば、
➡ 自ら密閉度が低いと認めていることになります。 - 調湿力は期待できないと説明してくれば、
➡ 調湿力はセールスポイントでは無いと認めることになります。
これは面白くて、営業マンは調湿力が高いと説明してきますが、建築士が一人の時に聞いてみると「私も調湿力は期待できないと思います」とあっさり認めますよw
余談でしたが、まぁ、へーベル板もダインコンクリートも、断熱材で内断熱してるので、あまり差は出ない部分ですね。
決めてはコレです
結果発表~!
①耐震 :へーベル板の勝ち
②パネル強度:ダインコンクリートの勝ち
③断熱 :へーベル板の勝ち
④遮音 :ダインコンクリートの勝ち
⑤防水・調湿:引き分け
狙ったようにw? 2対2、1引き分けでしたが、
✔私は、耐震性能や断熱性能などの安全面を重視したいので、ヘーベル板が良いと考えます。
より具体的に言えば、重量鉄骨造&へーベル板(ALC)の組み合わせが良いですね。
(住宅業界ではわざわざそのように指定しなければなければなりませんが、建設の世界では鉄骨造と言えば重鉄&ALCがスタンダードです。)
いずれにしても、基礎の立ち上がりや鉄骨の厚み、大きさ、ブレース構造、どれを取ってもへーベルハウスの方が丈夫な造りに見えます。
この辺は構造躯体(骨格)の話になってしまうので、また別の記事で書いていきますね。
私から見るとダインコンクリートは中途半端な素材だと思います。
だって、わざわざ重くしてパネル強度を出す必要ありますか?
➡鉄筋コンクリート造のようにパネルが構造躯体ならば当然強度が必要ですが、鉄骨を覆う洋服のような役割ですから、軽くて丈夫、断熱性能を持った素材の方が望ましいと思います。
(積水ハウスは壁にはダインコンクリートを使用しますが、床にはALCを敷き詰めるようです。なぜでしょうね。)
なんとなく、邪推ですが。
どちらも母体は化学企業です(旭化成、積水化学)。しかし、建材という分野ではALCもネオマフォームも旭化成に軍配が上がりますよね。
他社の製品を買うよりも自前で作ってしまった方がコストを抑えることができるのでやってみたけど、同等レベルのものが作れなかった。
そんな気さえしてしまいますが、真相は本人のみぞ知る、ですが。
(ALCの材料は珪石、セメント、生石灰、アルミニウムくらいなので一次産品としては安いですが、これをALCパネルにする段階で付加価値がたっぷり乗っかってきます。)
コメント
ヘーベルハウスは基礎が軟弱(ちゃち)。ALCは水の浸水に弱い。間取りにも制限が多すぎ。