【宅建応援!】権利関係 取消と解除の違い、第三者対抗

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不動産一般

 

 

前回の記事では「意思の不存在」についてお話しさせて頂きましたが、
実際のテストでは「意思の不存在」だけが出題されるというよりは「第三者対抗(対抗要件の具備)」や「時間軸」を合わせた複合問題の方が多く出題されます。

 

 

そして、この複合問題は理屈を確り理解していないと解けない一方で、参考書では分かり易く解説されていないことが多いので、民法に苦手意識を持つ人が最も多いテーマな気がします。

 

 

民法は覚えようとするとどんどん難しくなっていっちゃうので、考え方を大事にしましょう!

民法を解くときの基本は「大岡越前になりきる」ことですw

 

 

 

それでは早速、複合問題を解くための考え方3つを伝授しますね。

 

 

無効と取消と解除の違い(言葉の定義)

 

まずは、無効と取消と解除の違い(言葉の定義)を明確にしておきます。

実は、意思の不存在の5パターンを説明したときに触れておけば良かったんですが、当たり前過ぎるので説明を省いていました。
でもこういう当たり前の積み重ねが大事ですからね。ということで、説明することにしました。

 

  • 無効 :そもそも契約の効力が発生していない(契約が成立していない)状態
  • 取消 :契約に欠陥があったので、取り消した時から契約時に遡って無効化
  • 解除 :契約は正常なものだったが自己都合で解除した時から契約時に遡って無効化

 

こんな感じです。取消と解除って法的に全然意味合いが違うんです。

 

 

以前、NHKから国民を守る党の立花さんが放送受信契約についてNHKふれあいセンターとやりとりする中で「解除じゃなくて取消でしょ!」と口酸っぱく述べている動画を見たことがありますが、そういうことです。

 

放送受信契約自体に不備があるのだから解除ではなく取消が正解なんですよね。解除と言ってしまったら自分が悪いと認めていることになります

 

実は人生色んな場面で民法の知識があれば損しないで済む場面があります。
例えば新築請負契約なんて、民法に明るくない人が何の対策も講じずに契約⇒後日キャンセル(解除)⇒法外な費用を請求され⇒泣き寝入りですよね。

 

 

それでは無効、取消、解除、それぞれの言葉に対して、表意者の属性や第三者対抗要件がどのように結びついていくかを表で確認してみましょう。

 

解除と取消の違い、表意者の性質と第三者対抗

 

めっちゃ分かり易い表が出来ちゃいましたw まずは下表とにらめっこしてみて下さい。

 

サクッと説明しておくと、

  • 解除になるパターンは自己都合のみでこれは表意者が100%悪いので、第三取得者は常に対抗できます。
  • 無効になるパターンは心裡留保と虚偽表示でこれは表意者に責任がありますから、第三取得者は善意のみで対抗できます。(当たり前ですよね?分からない人は前回記事を読んでくださいね。)
  • 意思の不存在で取消になるパターンは錯誤、詐欺、強迫でしたね。この場合は基本的には表意者に責任は無いので、第三取得者は善意無過失である必要があります。(これも分からない人は前回記事を読んでください。)
  • もう一つの取消になるパターンは表意者が制限行為能力者の場合です。もちろん責任は無いですし、第三取得者よりも優先されます。

 

こんな感じで表にしてみると、帰責事由のあり/なしと、第三者対抗要件の段階的な適用が分かり易いですよね。

 

 

 

さて、ここまでの知識だと動産の契約でしか使えません。つまり、契約が成立したら所有権の対抗要件も移転する対象物しか通用しません。

 

しかし、不動産の所有権を第三者に対抗するには登記が必要です。

不動産の場合は契約を交わしただけの状態を不完全な所有権と言い(←これはテストには出ません)、登記を得て初めて完全な所有権と言います。

 

 

対抗要件の具備

 

対抗要件の具備について下表に簡単に纏めました。

 

 

試験には出ませんが、イメージが湧きやすいと思ったので特許権も載せてみました。

第三者対抗要件の具備もよく試験で出題されるので、理解しておいて下さいね。

 

 

さて、複合問題を解くための考え方3つを理解したところで、例題を解いてみましょう!

 

例題

手始めに3問いってみましょう!

 

  1. AがBに甲建物を売却し、AからBに対する所有権の移転登記がなされ、BがAB間の売買契約締結後、甲建物をCに転売する契約を締結していた場合、AはAB間の売買契約を解除しても、Cの甲建物を取得する権利を害することはできない。
  2. AがBに甲建物を売却し、AからBに対する所有権の移転登記がなされ、Bが、Bの債権者Cとの間で甲建物につき抵当権設定契約を締結し、その設定登記をした後、AがAB間の売買契約を適法に解除した場合、Aは抵当権の消滅をCに主張できない。
  3. Bが甲建物をCに賃貸し、引渡しも終えた後、AがAB間の売買契約を適法に解除した場合、Aはこの賃借権の消滅をCに主張できる。

 

 

答え合わせです。

 

1.この問題は対抗要件の具備の問題です。Cはまだ登記を得ていないので、Aが解除して登記を先に得ることが出来ればCの権利を害することができます。なので答えは×です。

2.この場合は債権者Cによる抵当権設定登記が済んでいるので、AがAB間の契約を解除してもCの権利を害することはできません。答えは〇です。

3.引渡しが済んでいるので賃借権の第三者対抗要件が具備されています。なので答えは×ですね。

 

 

続いて2問いってみましょう!

 

  1. Aが、自己所有の甲土地をBに売却した場合、AがBにだまされたとして詐欺を理由にAB間の売買契約を取り消した後、Bが甲土地をAに返還せずにDに転売してDが所有権移転登記を備えても、AはDから甲土地を取り戻すことができる。
  2. Aが、自己所有の甲土地をBに売却した場合、AがBにだまされたとして詐欺を理由にAB間の売買契約を取り消したが、既にBが甲土地をDに転売してDが所有権移転登記を備えていた場合、Dが善意であればその過失の有無に関係なく、AはDから甲土地を取り戻すことができない。

 

答え合わせです。

 

1.これが時間軸の問題です。取消が登記の前か後かで結果が異なります。
重要なのは、取消の定義を確り覚えているかです。取消の定義は「契約に欠陥があったので、取り消した時から契約時に遡って無効化」でしたね。ポイントは取り消した時から契約時までの無効化なので、登記がその間にあれば登記も無効化できますが、無効化した後に登記をされていたら取消の効力が通用しないということです。なのでこの問題の答えは×です。

 

2.これが複合問題です。意思の不存在と対抗要件と時間軸が混ざってて「えっ?!」ってなっちゃいますよね。まずは時間軸を考えましょう取消のタイミングは登記の後なので、対抗要件の具備(登記の有無)を問う問題ではなく、表意者の性質と第三者対抗を問う問題です。そうなると、詐欺に遭った表意者には帰責事由は無いので、第三取得者が権利を取得するには善意且つ無過失である必要があります。なので答えは×ですね。

 

如何ですか? 解き方が分かってれば簡単ですよねw

 

 

Appendix(真の所有者について)

 

せっかくなので真の所有者についても触れておきます。

問題を見てしまった方が早いので、まずは例題から。

 

  1. Aが自己所有の甲土地をBに売却し、Aが甲土地につき全くの無権利の登記名義人であった場合、真の所有者Dが所有権の登記をBから遅滞なく回復する前に、Aが無権利者であることにつき善意のCがBから所有権移転登記を受けたとき、Cは甲土地の所有権をDに対抗できる。
  2. Aが自己所有の甲土地をBに売却し、BはAとの間で売買契約を締結して所有権移転登記をしたが、その土地の真の所有者はCであって、Aが各種の書類を偽装して自らに登記を移していた場合、Cは所有者であることをBに対して主張できる。

 

 

1.この問題を知らない場合は登記の有無で判断してCの勝ち!と言いたくなっちゃうかも知れませんが、Dの立場に立って見たらたまったものではないですよね。登記さえ捏造できれば何でもアリになってしまいます。こんなことが起こらないようにするためのルールとして、登記には公信力が無いという前提が置かれています。民法ってよく考えられていますよね。答えは×です。

 

2.前問で説明した通りです。Bもかわいそうですが、元々権利の無いところに権利は生まれないので、Bは所有権を主張できません。答えは〇です。
ちなみに、この場合Bは完全に泣き寝入りするしかないかと言うとそうでは無くて、Aに対して損害賠償請求をしていくことになります。まぁ現実的にはこの場合のAって地面師ですからね。お金は既に裏社会に消えちゃって戻ってこないと思いますが。。

 

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