今回の記事でお伝えしたいことは、
「買い付け申込みの前に、重要事項説明記載項目とハザードマップは最低限チェックしましょう」
ということです。
不動産を買う前に気を付けることはそれなりにあるんですけど、数字(利回りや収支シミュレーション)のことは一旦置いておいて、そもそもの不動産自体に問題があったら取り返しがつかないですよって話です。
【後悔なし】不動産を買う前に最低限気を付けるべきこと【例題2つ】
良く言われることですが、
利回りは頑張れば変えられます。しかし、立地は変えられません。
契約前に重要事項の説明も受けると思いますが、その時に見過ごしたら大変ですよね。
不動産投資上級者の方のブログなどでも、契約書や重要事項説明書(以降、重説)を2~3日前から貰ってよくチェックしておけ、という指摘がありますが、それだけ大事なことだということですね。
尤も、フツーはその後の業者との関係もあるので、買い付け申込みの前段階で気付くべきです。
買い付け申込みを入れてからキャンセルするような客を紹介してきた客付け(買主側)業者にその後物件を紹介したいと思いますか? ➡思わないですよね。
買い付け業者の立場に立ってみたって、そんな客に良い物件を紹介したいとは思わなくなりますよね。
不動産取引は相対取引ですから、人と人との縁というのもあります。だから買い付け申込みを入れる前に確り吟味すべきなのです。
重要事項説明
本来、宅地建物の取引というのは一生に何度もないイベントですので、お客さんは入手しようとしている物件がどういう物件なのか判断するために、その物件の重要事項を宅建業者に説明して貰うことできます。
この重要事項の説明は、物件を入手する当事者に対して、契約成立前に重説を交付&宅建士が説明しなければなりません。
その中でも、必ず説明しなければならないものとして以下の項目があります。
重要事項説明の記載事項 | |
官僚 | 工事完了時の形状・構造(未完成物件の場合) |
が | 解除に関する事項(定めがなければ「なし」と記載する) |
(か) | 瑕疵担保責任履行措置の概要(措置を講じないなら「講じない」と記載する) |
徒 | 登記された権利の種類・内容 |
歩 | 法令上の制限 |
私道 | 私道負担の有無(負担がなければ「なし」と記載する) |
上下 | 上下水道、電気、ガスの整備状況 |
し | 住宅性能評価を受けた新築住宅ならその旨 |
て | 手付金等保全措置の概要 |
預り | 預り金・支払金保全措置の概要 |
金 | 「代金、交換差金、借賃」以外に授受される金銭の額・授受の目的 |
〃 | 代金、交換差金の金銭貸借のあっせん内容と、貸借不成立の場合の措置 |
分 | 区分所有建物特有の9つの事項(区分の場合のみ) |
け | 建物特有の3つの事項(石綿使用有無、耐震診断有無、建物状況調査有無) |
た | 貸借特有の6つの事項(貸借の場合のみ) |
そ | 損害賠償額の予定、違約金(定めがなければ「なし」と記載する) |
ろう | 割賦販売(ローン)の場合の現金販売価格、割賦販売価格その他 |
記載事項が結構多いので、宅建勉強者向けですが、有名な覚えやすい5.7.5.7.7の短歌があるので左側に補記しておきました。
「官僚が(か)徒歩で私道を 上下して 預り金を 分けたそうろう」
もちろん、不動産投資をする人は短歌から記載事項を暗記する必要は無いですが、物件買い付け申込みを入れる前に、上記記載事項が無いか必ず確認しましょう。
と言っても、イメージ付かないですよね。2つだけですが例題(物件概要及び写真は架空の設定です)を用意しておきました。
買いか/買うべきでないか、検討してみて下さい。
例題1
取引先買付業者より以下の物件概要書と物件写真を入手しました。買い付け申込みを入れるか判断してみましょう。
物件名 | レイダイフラッツ |
売買価格 | 62,000,000円 |
所在地 | 埼玉県越谷市〇〇〇 |
交通 | 東武スカイツリーライン新越谷駅徒歩10分 、 JR武蔵野線南越谷駅徒歩11分 |
土地 | 地目:宅地、現況:宅地 | 面積:250.50㎡ | 権利:所有権 | 私道負担:無し |
建物 | 構造種類:軽量鉄骨造スレート葺地上2階建 | 床面積:200.00㎡ |
築年月:2014年7月7日 | 現況:満室 | 引渡し:相談 | |
制限 | 用途地域:第一種低層住居専用地域 | 高度地区:10m高度地区 |
建蔽率:40% | 容積率:80% | 防火指定:無し | 道路計画:無し | |
接面道路 | 北側(私道)、幅員約4m 接面約4m |
収入 | 満室想定:5,000,000円/年 | 現況:5,000,000円/年 | 利回り:8.06%(太陽光除く) |
備考 | ・設計、建築:積水ハウス | ・2路線使用可能 | ・太陽光発電5.0kW搭載(売電中) |
・セブンイレブン 徒歩7分 | ・マルエツ(スーパー) 徒歩11分 | |
※一切の公告厳禁(インターネット含む) | |
※取引形態:売主 |
答えは例題2の後ろに記載しておきますね。
例題2
以下の物件概要と写真がネットに掲載されていました。買い付け申込みを入れるか判断してみましょう。
物件名 | 麗台エステート |
売買価格 | 205,000,000円 |
所在地 | 埼玉県さいたま市南区〇〇〇 |
交通 | 京浜東北・根岸線 「南浦和」駅 徒歩20分 |
土地 | 地目:宅地、現況:宅地 | 面積:500㎡ | 権利:所有権 | 私道負担:無し |
建物 | 構造:木造3階建て | 床面積:510㎡ |
築年月:2019/7/7 | 現況:満室 | 引渡し:相談 | |
制限 | 用途地域:第二種中高層住居専用地域 |
– | |
接面道路 | 北東6m公道 接面10.3m |
収入 | 満室想定賃料:14,500,000円 | 現況:14,500,000円/年 | 利回り:7.07% |
備考 | 駐車場:無し |
オーナーチェンジ | |
※取引態様:仲介 |
↓適当な画像が見当たらなかったので某学校の素材写真ですが木造の共同住居と仮定して下さい。
例題1と例題の2の答え(問題点)
答えと言っても、考え方は人それぞれです。
「何が正解か」なんて分かりません。正解はややスペクトラム的だと思ってます。
判断基準は人それぞれですからね。私の判断基準で良ければ、私のブログで全て公開しておりますので、参考にして下さい。
なので、不動産投資において唯一言えることは「失敗しないこと」が正解だと思っています。
(前回記事の【②投資(=勝つ確率の高い方法)として成り立つ】の項目で述べた通りです。私にとっての正解はお宝物件ではありません。それなりの物件で良いんです。)
=物件毎の問題点が分かれば十分です。
✔例題1の答え(問題点)
例題1の問題点はズバリ「接面道路:北側(私道)」と「私道負担:無し」です。
物件が接道している部分が私道しか無いのに、私道が他人の物という状態です。
まだ物件が新しいから直ぐに影響は出ないかもしれませんが、将来的に道路が荒れ果て、水道管が老朽化しても、勝手に修復したり出来ませんし、そもそも修復を行うか否か、費用負担をどうするかなど、私道の利用者の合意が無いと実行に移せません。
✔例題2の答え(問題点)
新築なら事前に気付くかも知れませんが、中古取得だと見逃しがちなのがコレです。
問題点はズバリ「擁壁や高台」です。物件概要には書いてないですが、写真を見ると分かります。
(あえて分かり易い写真を選んできたので何が問題点か簡単過ぎましたかね。)
擁壁と言えば宅地造成等規制法ですが、重説で言うところの「法令上の制限」の範疇になります。(こうなると覚えることは一体どれくらいあるんだ?!となりますが、気を付けることは実はそんなに多くありません。一つ一つ覚えていけばOKです。)
崖崩れや土砂災害、水害が発生する場所など=危険な場所を宅地とする場合に、この宅地造成等規制法で、擁壁を造れだの排水設備を造れだのと規制されるわけです。
新たに擁壁を造る場合だけでなく危険性が増せば改善命令を受けたりします。その場合のコストは数百万円、数千万円といった可能性もあります。
宅建の参考書買おうかなと思っちゃった人へ
わざわざ宅建の参考書を買う必要は無いです。参考書は試験の為の勉強方法がメインなので不動産投資に役立てるには、めっちゃ深堀りして調べ込まないと意味ないです。
↓宅建関連の調べ事ならこのサイトが良いですよ(私のブログとは全く関係無いです)。
http://www.law-ed07.com/cyber-law/top.html
このサイトは「なぜ」の背景が確り書かれているので、私も何か調べるときは良く使っていました。
ハザードマップ
ハザードマップはご存じですよね。これは必ず調べて下さい。初歩中の初歩です。
↓ハザードマップを調べたいときはこのサイトが便利です(国交省ポータルサイトです)。
http://disaportal.gsi.go.jp/
重ねるハザードマップという機能ですが、↓こんな感じです。
洪水、土砂災害、津波、道路防災情報を全て地図上に重ねて表示出来ます。
上記は、埼玉県のベネツィアとの呼び声も高い「せんげん台」という地名の場所です。
➡盛り土、埋め立て地で洪水時の浸水が3~5m。事実、大雨が降るといつも洪水になってます。
地元の人は数年おきに浸水被害に遭うことを知っていますが全く知らない場合、よく調べないで買って後から後悔する可能性もあります。必ずハザードマップで調べましょう。
結局、問題ありの物件は買っちゃいけないのか?
それじゃ、問題ありの物件は買っちゃいけないの?
➡ダメな訳ではありません。値段次第です。
物件の実力よりも高く買うと後が大変だぞぉ!ってことを理解してればOKです。
✔例えば、例題1の物件は、実際に最近、私が客付け業者から紹介してもらった物件です。私なりに価格を査定したところ、物件評価は45百万円(売主のBid)だったので「50百万円(売主のOffer)なら指値で買いますよ」が私の答えでした。
実はこの物件はかなり特殊で、旗竿地の中の旗竿地のような車が入っていくのもやっとな感じの物件でした。物件というのは面構え(ツラガマエ)も大事ですから、無理して買う必要はありません。指値まで下がれば、ご縁があった、ということです。
✔例題2の物件はよくある不動産情報サイトに載ってた物件です。資料請求すらしてないので分からないですが、私の感覚では110百万円~120百万円くらいの価値しか無いと思います。
訴えられちゃうので実物でお話しできないのが心苦しいですが。。
せんげん台だって、住んでいる人は沢山います。
要は値段次第です。買えない(絶対ダメな)物件なんてありません。
(例えば廃車処分する予定の車だって、案外、1万円とかで引き取ってくれたりしますからねw)
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