金利4.5%と言えばスルガですね。
既に過去の話なので今更と思うかも知れませんが、低金利時代に高金利で借りることの意味を知っておくことは無駄にならないと思います。
【不動産投資】借入金利4.5%の意味を考える【倒産確率43%】
どこかの記事でスルガが4.5%で融資するのは有りと出ていました。
普通の銀行が担保価値のある=積算評価の出る物件にしか融資しない中で、スルガは金利次第で融資を出すという姿勢はある種、正しい(潔し)的な論調でした。
これに対して私は「まぁ、確かにそうかな、そういう考えもあるな」と思った一方で、そのまま文字通りに解釈するのもキケンだなとも思いました。
書いてあったのが投資用不動産の総合情報サイトのコラム記事だったので、立ち位置が売主側寄りなのは仕方無いことですが、文字通りに解釈してしまうのはキケンです。
初心者が知っておくべき注意点を2点、まとめておきますね。
1. 通常の不動産投資だと、4.5%の借入金利では回りません。
どういうことか?
およそ私の相場観では、(耐用年数の残存期間からして)持ち切り前提の中古物件の利回りというのは、都内RC5%前後、外環周辺RC7%前後、国道16号の外側の首都圏RC9%前後という形でだいたい同心円状で利回り相場が形成されており、これが軽量鉄骨なら+2%、木造なら更に+2%といったイメージを持っています(もちろん、利回りとリスクはトレードオフの関係なので、物件毎の個別要因で変わってきます)。
基本的に、元々資産を持っている層は自己資金を投入出来るので都内RCを購入出来ますが、我々のような元手の無い層は必要コストを勘案すると最低でも7%は必要です(金利1%で20年~30年くらい融資を受ける前提)。
25年間でフルローンで融資を受けた場合、金利が1%だとすると毎年の利息負担はザックリ0.5%程度。元金返済もは年間1/25ずつなので元金の4%程度となります(←本来不動産ローンは元利均等返済ですが、簡単のために元金均等返済でイメージしています)。
つまり、金利が1%でも融資の返済だけで4.5%は持っていかれるので、そこに他の費用を入れたら利回りが7%程度は無いと、実質マイナスになってしまいます。
(都心RC一棟買いは、フルローン前提の投資家には厳しい=自己資金を出せる投資家向け、ということですね。)
要するに、スルガで借りようと思ったら元本部分で4%、金利部分で2.25%、合わせて6.25%の返済コストが掛かるということなので、最初から16号の外側か軽量鉄骨や木造を選ぶ=リスクを取るしか収支プラスでエントリー出来ないわけです。
(もっと物件価格が安かった時代にエントリーしていた人なら別ですけどね。こういう人たちは勝ち組です。)
2. 金利4.5%の意味(あなたは43%の確率で倒産すると見られている!)
以降では、(1)金利を構成要素に分解し、(2)債務者の倒産する可能性がどれくらい見積もられているか、を検証します。
(1)金利を構成要素に分解
まず前提条件として、金利の構成要素というのは、金利 = 無リスク金利 + リスクプレミアムで成り立っています。
- 無リスク金利とは、お金が返ってこないリスクの無い純粋な金利、つまり、インフレ見通しや政策金利のみということです。
- リスクプレミアムとは、借主がお金を返さない可能性、つまり倒産確率を表します。
書き直すと、以下のように言えます。
$$\large{債務者の借入金利 = 無リスク金利 + リスクプレミアム}$$
無リスク金利の代表と言えば日本国債です。
日本国債の金利は、最近20年債が0.4%、30年債が0.6%程度で推移しています。
不動産投資で融資を受ける場合に無理の無いキャッシュフローを得ようと思うと大体25年くらいで借りる人が多いと思うので、25年の無リスク金利を線形補完すると0.5%となります。
また、日本国債は20年債も30年債も10年前は2%程度あったんですが、どんどん金利低下していき5年前くらいから0.5%を挟んで上下している感じなので今回の試算については0.5%で良いと思います。
さて、
4.5%から0.5%を引けばリスクプレミアム!
となれば話は簡単なんですが、債券と違って、不動産投資で利用する融資は元利均等返済なのでキャッシュフローの構造が異なります。
債券の無リスク金利と比較するために不動産投資を債券と同じキャッシュフロー構造に置き換えてみます。
文章だと小難しいですが、簡単に言えば利回りを出すだけです。
年限が長いので正しくは複利を使うべきですが、簡単のために単利でお話をします。この先も単利や複利などの利回りという概念を使って説明していきますが、もし利回りがよく分からないという方は前回記事を参考にしてみて下さい。利回りについて出来る限り簡潔に説明しております。
【前提条件】
100万円を金利4.5%の元利均等返済で借りる場合を想定し、それを債券と同じキャッシュフローの利回りに直して比較します。
前回記事でも説明しましたが、「投下した資本に対していくら儲かるのか、その年率が利回り」でしたね。これだと主語は銀行になってしまうので、借りる側に置き換えると「借りた金に対して元金と利息でいくら払うか、その年率が利回り」となります。
計算してみましょう。
$$\large{r} = (\frac {68.6万円(利息総額)}{100万円}) \div 25年 = 2.74%$$
つまり、$ 2.74% – 0.50% = 2.24% $がリスクプレミアム(銀行が見るあなたの倒産確率)となります。
(2)リスクプレミアムから倒産確率を計算
それではリスクプレミアムが2.24%の人の倒産確率はどれくらいと見られているか計算してみましょう。
デットクロスする時期や築年数が経過するに連れて倒産確率が高くなるのが自然ですがそこまで高度な計算は出来ませんw
すごーく平たく言えば、
毎年2.24%の確率で倒産すると見ている。
➡ つまり、毎年97.76%の確率で生き残る。
➡ 25年後に生き残っている確率は$0.9776^{25} = 0.57$なので、
➡ 25年後の倒産確率は43%と出すことができます。
が、せっかく前回記事で利回りについてご説明したので、アカデミックな計算を以下に展開しておきますね(単利では対応できないので複利を使います)。
$$\frac{0.5}{1+0.0274} + \frac{0.5}{( 1+0.0274 )^2} + ・・・ + \frac{0.5 + 100}{( 1+0.0274 )^{25}} = 59.84\tag{1}$$
↑毎年0.5%を25年間貰い続けるキャッシュフローを無リスク金利である0.5%ではなく貸出金利2.74%で割り引くことで現在価値を導出します。
$$\frac{0.5}{1+0.005} \times x + \frac{0.5}{( 1+0.005 )^2} \times x^2 + ・・・ + \frac{0.5 + 100}{( 1+0.005 )^{25}} \times x^{25} = 59.84\tag{2}$$
↑毎年の割引キャッシュフローに生き残り確率を掛けた結果が先程の(1)式の59.84と同一になるときの生き残り確率$x$を求めます。
$ x = 0.9784$、年間の倒産確率は2.16%
$ x^{25} = 0.5734$より、25年間の倒産確率は42.66%
簡便な方法と大体近い値ですよね。
つまり、金利の構成要素から見れば、スルガで4.5%で借りていた人達の倒産確率は43%と見られていたということになります(融資期間25年の場合)。
信じられますか?? バカにするのもいい加減にして下さい!ってなっちゃいますよね。
あ、でも絶対に借りちゃいけないってわけでは無いですよ!
お金を貸してくれる人がいなければ我々フェーズ1の人間には資産形成は出来ないわけですから、これらのリスクを甘受して、それでも借りる!という判断なら止めません。
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