たまたまある木造系ハウスメーカーさんのサイトを拝見しまして、
その中で
三匹の子ぶたの童話になぞらえて「木造が一番!」みたいな話をしていたんですが、
何も知らないシロートさんだとコロッと騙されちゃいそうなw巧みなポジショントークだったのでご紹介しておこうと思います^^
(一部抜粋)
台風の風速を30〜40メートルと仮定した場合、40坪の家が横から受ける力は約6トンあるため、「わらの家」は一番早く吹き飛ばされ、「レンガの家」はもっとも吹き飛ばされにくくなる。
・・・(省略)・・・
正しく構造計算をした家は「6〜8トンの力で建物を横に動かす力」に対して、0.3度以下の傾きしか許さない精密さを求められるから、安全性が確保されている。
・・・(省略)・・・
「わらの家」は地震には強いが台風には弱い。「レンガの家」は台風には強いが地震には弱い。つまり、地震と台風の二つの自然災害に脅かされている日本では「木の家」が最適であり、もっとも賢い選択になるというのは、こういうわけだ。
要するにRC造よりも木造の方が良いですよと暗に表現したいようなんですが、
うーん^^汗、
構造計算の大事さを述べている割には結論が破綻しちゃってますね・・・。
(なんなら構造計算の意味すら分かってないんじゃないのか笑)
そもそも、地震という外力に対して耐えられるように構造計算しているわけですから、
いずれの構造だろうが地震に対して耐えられるように設計されているということです。
なので、木造の方が強いという判断にはならないですよね^^
それに、木造は2階建ての場合はそもそも構造計算しないのが当たり前というのが建築の世界ですし、層間変形角も全然違うので超巨大地震が発生したときの損壊具合が全く違います。
その辺は置いておいても、
地震に対する強度が同じだった場合、RC造の方が自重が重いわけですから、その分、外力に対しても強いってことなんですけど、
分かりますかね?
せっかくなので簡単に説明しておきますね^^
建物に作用する地震力の構造計算は、建物の自重の20%の水平力を地震力として作用させて計算します。(これが構造計算における耐震等級1というやつです。)
なので、建物の重さが大きくなるほど、横から加える力を大きくして構造計算する必要があります。
建物の自重が重いほど地震力の影響を受けるという意味ですが、これは経験則的にも何となく分かりますよね。
↑この一点だけならば、軽い家ほど地震の影響を受けにくいと言い換えることもできますが、
先ほどご説明した通り、重ければ重いほどその地震力に耐えられるくらい丈夫に設計するのが構造計算なので、自重が軽いほど地震に対して有利というわけではありませんので勘違い無きよう^^
また、台風19号のときの被害や熱海の土砂崩れの時の被害状況を考えてもらえれば想像しやすいと思いますが、自重が重いRC造の方が外力に対して強いに決まっているんです。
さて、せっかくなので木造のお家の重さとRC造のお家の重さがどれくらい違うか比較してみましょうか^^
まず木造のお家の重さから。
具体的には柱、梁、外壁、屋根、床材に造作や家財を個別に足し合わせていけば良いんですが、一般的には木造家屋の重さは平米300kgと言われていますのでそのまま採用しましょう。
300kg/㎡×165㎡(50坪)=49500kg=約50t
(ちなみに↑この内の半分くらいが建物本体の荷重と言われいます。)
ここに基礎を入れると、
基礎(べた基礎厚さ10cm):82.65㎡(25坪)×0.10m×2450kg/立米=20250kg=約20t
で、合計は約70tとなります。
(∵普通コンクリート1立方メートルあたりの質量は約2.3t、鉄筋コンクリートの場合は約2.45tと言われています)
(簡単のために計算上、基礎の立ち上がり部分は除いていますが、本来、木造のベタ基礎耐圧版の厚さは8cm程度のところを10cmで余裕を見ていますので、実際はもっと軽いと思われます。)
続いてRC造の重さを推定してみます^^
二階建てで高さが6m、縦×横が9m×9m、コンクリートの厚さが18cmだとすると、
- 外壁:(高さ6m×底辺9m)×厚み0.18m×4面×2450kg/立米=95255kg
- 2階フロア:縦9m×横9m×厚み0.18m×2450kg/立米=35720kg
- 2階陸屋根:縦9m×横9m×厚み0.18m×2450kg/立米=35720kg
建物部分だけで計166700kg=約167t
ここに基礎を入れると、
基礎(べた基礎厚さ30cm):82.65㎡(25坪)×0.30m×2450kg/立米=60750kg=約61t
合計は約228tとなりました。
ということで、木造:RC造の重さは50t:167t(基礎も含むと70t:228t)となりました。
如何ですか?
RC造の方が木造よりも3倍以上も重いという結果になりました。
建物に作用する地震力の構造計算は、建物の自重の20%の水平力を地震力として作用させて計算しますから、
木造ならば10t、RC造ならば33t の水平力を構造計算で掛けるわけですね^^
せっかくなので先程の3匹の子ぶたにお話を戻すと、狼の息は台風に置き換えることができますが、
風によって建物に加わる力は、建物の構造に関係なく、風が当たる面積で決まります。
例えば、幅8m程度の2階建住宅に60m/秒の強風が吹きつけた場合、建物全体には約8t(約80kN)もの力が加わることになります。
関東では38m/秒が一般的な建築で採用される計算値ですが、年々台風の威力が高まっていますから、近い将来、瞬間風速的に60m/秒の強風が吹くことだって十分あり得ますよね。
竜巻ならばその風速は80m/秒にも達しますから、木造ではひとたまりも無いわけです。
以上、みなさんも根拠の不明なポジショントークに騙されないように気を付けて下さいね^^
慣性の法則が働くから、地震力の計算には家財の重さも含むとは思うんですけど。詳しい方がおられましたらコメントお願いします^^
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