親の代から住んでいるマイホーム(築30年以上)。
いくら木造とはいえ、既に家中あらゆるところの床がベコベコ凹んでしまっています。
木造でも50年以上住めるとか言われますが、既に法定耐用年数(22年)も過ぎているし、これから不具合が生じるたびに大金を掛けて修繕していくのも何だかお金が勿体ない気がしてそろそろ建て替えどきかなと思い、最近、住宅展示場を回り始めました。
そこで今回は、W造(=木造)、S造(=鉄骨造)、RC造(=鉄筋コンクリート)について、下記のようなよくある疑問に対して一つの考え方を提供させて頂こうかなと思います。
「どの構造も同じ耐震等級なら耐震性は同じなの?」
「どの構造のHM(ハウスメーカー)もウチは耐震等級3だから丈夫だと言うけれど、結局どの構造が良いの(丈夫なの)?」
【W造,S造,RC造】同じ耐震等級ならどれが良い?【私はRC!】
耐震等級3ってどれくらい安全なの?
品確法における耐震等級とは、建築基準法により求められる構造強度に対して、耐震等級1であればその1.0倍、耐震等級2であればその1.25倍、耐震等級3であればその1.5倍の強度を有するという意味で使われる尺度です。
建築基準法で求められる構造耐力の条件とは以下の通りです。
- 10年に1度発生することを想定した中規模地震(震度5程度)でほとんど損傷しないこと
- 100年に1度発生することを想定した大規模地震(震度6~7程度)で、損傷や変形は生じても倒壊しないこと
とはいえ震度6以上の地震って最近頻発するようになってきた印象がありますよね。こういう大規模地震でも1回は大丈夫かも知れませんが、地震の度に躯体がダメージを蓄積していくので、2回、3回と地震を受けるたびに耐力は落ちていきます。ですので構造に関係なく、なるべく耐震等級3を目指していくべきでしょう。
同じ耐震等級でも構造によって耐震性は違うの?
問題です。
「全く同じピッタリ耐震等級1になるように設計したW造、S造、RC造の同じ間取りの二階建て住宅を建てた場合、どの構造が一番地震に強いでしょうか?」
- W造(木造)
- S造(鉄骨造)
- RC造(鉄筋コンクリート造)
- 全て同じ
答えは 「4. 全て同じ」 です。
それならばわざわざS造やRC造を買う人がいるのはナゼ? と思いますよね。
ここから先は、RC造寄りの立ち位置で性質の違いを論じていこうと思います。
(私自身、予算が許せばRC造、最低でもS造(重量鉄骨)を買いたいと考えています。)
同じ耐震性能でも構造毎に性質は全く異なります。
値段だけを考えればRC造はW造の2倍くらいの単価ですが耐用年数対比のコスパを考えればRC(47年)もW造(22年)もほぼ同じとか、耐火性能や防虫・防蟻、湿度や劣化など、
各構造を比較するための切り口はいっぱいありますが、
今回は構造毎の性質に注目して、「童話:三匹の子豚」と似た切り口でお話ししますね。
その1 建物重量による違い
建物に作用する地震力の構造計算は、建物の自重の 20% の水平力を地震力として作用させて計算します。なので、建物の重さが大きくなるほど、横から加える力を大きくして構造計算する必要があります。
建物の重さは延べ床面積150㎡≒45坪当たり、およそ
- 木造 45t
- 重量鉄骨 105t
- 鉄筋コンクリート造 230t
と言われます。
耐風力
RC造は大きい重量でも地震力に耐えられるように設計された結果、風圧力には余裕で耐えられます。
単純に重量に対する20%が水平力の基準であればRC造はW造の5倍強いと予測が付きますが、一説には10倍も強いというデータもあるようです。具体的な数値の比較では耐風力の比較データがあり、木造の場合、耐力壁5枚で80kN(風速60m/s)に耐えられるらしいですが、壁式RC造ならば295kNなので、今までに計測された世界最大風速94m/s(=125kN)の2倍超。もはや無敵です。
近年関東に住んでいても、台風などの勢力が増してきており「風」に対する強さも重要な要素になってきていると思います。例えば、鉄筋コンクリートならば竜巻が吹いても躯体は無傷と言われています。
(物理)防御力
もう一点、特筆すべきは物理攻撃に対する強さです。
例えばW造やS造の住宅に自動車が突っ込んだ場合は住宅が壊れます。一方、RC造住宅に自動車が突っ込んだ場合は自動車が壊れます。
RC系のHMを回っていたところ、S造(ALC外壁)からRC造への建て替え案件で自動車が衝突したS造物件を見せて貰う機会がありました。
ロードサイドに建っていた軽量鉄骨ALC外壁の建物に車が衝突した事故現場を見せて貰ったのですが、一階部分が端から端まで崩壊していました。軽量鉄骨なので鉄骨はグニャグニャに曲がり、ALCも軽石のようなものなので発泡スチロールのように飛び散っていました。幸い家主は無事だったようですが、これを機にRC造への建て替えを決意したそうです。
よくある勘違い(「基礎が丈夫」はほとんどの場合、誤解です。)
住宅展示場に行くと必ずHMの担当者が「ウチの基礎は丈夫です」と言いますが、それは誤認勧誘です。
基礎だけを見ると、W造は割と簡素なベタ基礎、S造はW造よりも強そうな連続布基礎、RC造は更に丈夫そうなベタ布基礎ですが、これは建物の重さを支えるために必要な丈夫さや立ち上がりで作っているだけで、S造やRC造が優れているというわけではありません。
鉄骨系HMに行くと「ウチは形状も連続布基礎で、大きさも木造さんとは違います」とアピールされますが、当たり前のことを言っているだけです。S造の方が重いですからね。
なので、基礎や鉄骨の厚さを比較するなら同じ鉄骨系HM同士で比較しましょうね。
その2 変形角という考え方
建築基準法で求められる構造耐力の条件は以下の通りでしたね。
- 10年に1度発生することを想定した中規模地震(震度5程度)でほとんど損傷しないこと
- 100年に1度発生することを想定した大規模地震(震度6~7程度)で、損傷や変形は生じても倒壊しないこと
つまり、
- 損傷しない=躯体は無傷
- 倒壊しない=躯体が変形しても人命を即座に奪わない壊れ方をする
という意味ですが、「2」が我々シロートの常識的な感覚とズレている点ですよね。
我々シロートにとっては、パッと見の被害が小さいことが耐震性であり堅牢性だと思います。
そして、このパッと見の被害の程度を表すのが、層間変形角という考え方です。
地震時に建物は変形しますが、その層間変形角の許容量が決められています。
- W造(柱梁) 1/120
- W造(壁式) 1/150
- S造 1/200
- RC造(柱梁) 1/200
- RC造(壁式) 1/2,000
例えば、層間変形角1/120は、2.8mの階高で23.3㎜の変形まで許容されるという意味です。
壁式RC造の数値が厳しいのはコンクリートは変形量よりも強度面での限界が先に来るから=変形したらバキッと割れてしまうからです。なので壁式RC造ではハイレベルの強度が求められるのです。
柱梁構造の場合、天井や壁・サッシ、壁やその他設備などの許容層間変形角は1/200程度であり、1/120くらいから損傷し1/50で脱落すると言われています。つまり耐震性能は同じでも被害状況は異なるということですね。
1/2,000しか変形が許容されない壁式RCで建築しておけば大地震後の復旧対応にも違いが出てきそうです。(しかも1/2,000は耐震等級1なので等級3とすれば1/3,000となります。)
私の姉が地震に強いと有名なHMの軽量鉄骨ALC外壁の住宅に住んでますが、しっかり揺れて撓って地震エネルギーを逃がす構造ですから、築10年くらいで躯体は全く問題ないですが、既に壁紙や石膏ボードなどは亀裂が入っている部分がありました。
高い買い物なのでどこに重点を置くかで変わりますが、今回は、丈夫さ・堅牢さ、という観点で各構造の違いを記事にしてみました。これからも色々アップしていきますね。それでは!
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