以前にも色んな方面に確認をしてパルコンの防水性能について記事を書いたことがありましたが、
今回は目の前で実際に建築の工程を見させてもらった上で、改めてパルコンの防水性能について語らせて頂こうと思います^^
まず大前提として、
大成パルコンはプレキャストコンクリート造ですので、
基本的には、
鉄骨造のようなALCを組合せる場合や木造のサイディングを組み合わせる場合と同様に、パネル同士の接合部分にシール(コーキング)を打つことで防水性を担保しています。
シール(コーキング)というのは、お風呂とか水回り設備のゴムみたいなやつのことです^^
これが経年劣化で切れるので、定期的に防水処理をやり直してあげないと漏水してしまうことになります。
はい、事前知識はこの辺にして、早速、パルコンの防水性能について見ていきましょう^^
パルコンのようなプレキャストコンクリート造の場合は、
基本的にはパネルの接合部の処理と屋上のような雨水が溜まる水平面の処理がポイントになってきます。
と、言葉で説明しても分かりにくいと思いますので、
コンクリートの打ち継ぎ部分、パネル同士の接合部分など、水が侵入する可能性のある場所の防水処理についてそれぞれの箇所を個別にチェックしていきたいと思います^^
基礎打ち継ぎ面
まずは基礎の打ち継ぎ面から。
↑こちらは基礎のベース部分にこれから立ち上がり部分を打設する前段階の写真ですが、止水版と言われるブチルテープを置いた上に立ち上がり部分のコンクリートを打設することで外側からの水の侵入を防ぐ効果があります。
更に、立ち上がり部分のコンクリートが完成したら↓打ち継ぎ部分にバンデックスという防水剤を塗ります。
バンデックスとは、コンクリート内の毛細管組織に珪酸カルシウムの結晶体を形成しコンクリート躯体そのものに防水性を与える防水剤の総称です。
地中では土圧と共にかなりの水圧が掛かるので、止水版とバンデックスによるダブルの防水処理を施しています。
ということで、パルコンの基礎打ち継ぎ面からの漏水リスクは低いと考えられます^^
基礎と壁パネル、床パネルに壁パネル
続いて、基礎や床パネルの上に壁パネルを乗せている部分の防水処理について見ていきましょう^^
↓大成建設ハウジングのパルコンではこのように基礎や床パネルの上に敷きモルタルを乗せてから壁パネルを立ち上げていきます。
↓このように隙間という隙間は全てモルタルで充填されています。
↓さらに外壁表面側にシールを打つことで防水処理されています。
敷きモルタルだけだと雨水が周りこんでジワジワと漏水するリスクがありますが、シールを打っているので当然漏水することはありません。
そして、木造住宅のサイディングや鉄骨住宅のALCなどと異なり、シールの下側にモルタルが打ってあるので、シールが切れてしまってもドバーっと水が侵入してくることは考えにくいですね^^
※細かいことですが勘違いされないように以下の点についても伝えておきますね^^
モルタルを打ってからシールを打っていると言ってもシールがパネルとモルタルに3点接着しているわけではなく、モルタルとシールの間にはスポンジ状の緩衝材が入っていて、シール自体はパネル同士の2点接着になっています。
これは地震などで躯体が揺れたときに3点接着だとシールが切れやすくなってしまうため2点接着にしているんですが、
そもそも壁式鉄筋コンクリート造の層間変形角は耐震等級1で1/2000ですからね^^ 耐震等級3の場合は1/3000ということですから劣化以外の理由でシールが切れるという心配はほとんど不要かと思います^^
【W造,S造,RC造】同じ耐震等級ならどれが良い?【私はRC!】
ということで、
基礎や床パネルの上に壁パネルを置いてある部分の漏水もそこまで心配する必要は無いかと思います^^
壁パネルに床パネル
続いて、壁パネルの上に床パネルを置いてある部分の防水処理について見ていきたいと思います^^
残念ながら、壁パネルの上に床パネルを置くときには敷きモルタルはしません。
パネル同士の接合部分のみ上からボルトのような鉄筋をセットして、上に置いた床パネルの穴からグラウトを流し込んで接合するんですが、
敷きモルタルのように外周全面に流し込むわけではないので、防水面は外壁表面側からのシールのみに頼る形になります。
ということで、
パルコン板の接合部の中では最も防水性能が劣る部分と言えるでしょう。
壁パネル同士
壁パネル同士の接合に関しては、
↑このような現場でパネル同士を1枚の壁に繋げるコッター接合をしている壁はもちろんのこと、
↓壁同士が別々扱いの部分に関してもグラウトを注入して隙間を埋めてからシールを打つので防水性能はかなり高いと言えます。
↓外壁表面側から見たグラウトが固まった状態です。
(見た目だけなら現場打ちRC造の打ち継ぎ面とほとんど遜色無いですね^^)
あ、ちなみにパルコンで使っているシーリング材はSC-PU2NBという商品です。
耐久年数みたいなものはネット上に出ていませんでしたが、現場監督さんに確認したところ紫外線が強い南面で15年くらいだそうです。
屋上パネル
はい、続いて、屋上を見ていきましょう^^
屋上に関しては、パネル同士をグラウトで隙間なく接合してから、
↓バンデックスで一体化してしまうので、この時点で屋上面からの水の侵入は無くなります。
とはいえ、長期的に見たら、バンデックスだけではジワジワと水が染み込んできてしまいますから、
↓このようにポリマーセメントを使って水勾配を付けていきます。
屋上防水で大事なのが
- 防水層がしっかりしていることと
- 水勾配がしっかり取ってあること
の2点なんですが、
パルコンの場合は、
水勾配が1/100勾配しか取られていないので、十分な水勾配が取られているとは言えません。
一方、
↓ウレタン塗膜防水に関しては、HCエコプルーフという既定工法に則って、何層も重ねてしっかり塗っていたので、メーカー保証の付いている15年間は問題無く持つと思います^^
ということで、
水勾配に関してはもう少し取って欲しいなというのが正直な感想ですが、
パネル同士をグラウトで繋いでバンデックスで一体化、ウレタン塗膜防水もしっかり施工されているので、屋上面に関してはまず漏水の心配は不要かと思います^^
庇・ベランダ
庇やベランダに関しては、
床パネルの上に壁パネルを乗せている部分と重なりますので、室内側との境目に関しては敷きモルタルとシールで一次的な防水処理を行っているんですが、
↓更に2次防水として、バンデックス、水勾配、ウレタン塗膜防水を掛けて、
↓ウレタン防水は壁パネルに10cm以上被せているので、ベランダや庇部分からの漏水もまず考えなくて良いかと思います^^
さて、それではどこが一番漏水しやすいかというと、
やはり、壁パネルの上に床パネルを置いてある部分なんだそうです。
なぜなら、内側からグラウトで隙間自体は埋めていても、床パネルの上に壁パネルをセットする時のように予め敷きモルタルを入れているわけではないので、基本的な防水はシールに頼る形になってしまうから。
ということで、大成パルコンの防水性能は現場打ちRC造と比べれば多少劣りますが、
- パネル同士の接合部分にはモルタルやグラウトが流し込まれている点や、
- 他構造と比べて層間変形角が圧倒的に小さいという点があるので、
ボルト接合のプレキャストコンクリート造メーカーや鉄骨造メーカーと比べれば防水性能は遥かに高いと言えるでしょう^^
結局のところ、
経年劣化でシールで切れてくるとジワジワと漏水してくるリスクは高くなってくるわけなので、
当たり前のことですが、防水層やシールを定期的に点検して、適宜修繕していく必要があるということですね^^
現在使われている防水剤などの性能から考えると、メーカー保証の切れる15年後あたりが修繕の時期になるのではないかと思われます。
パルコン標準仕様の断熱ブロックを施工しているご家庭であれば、15年後は笠木周りのみで、断熱ブロックを外す大規模修繕は30年後というのが一般的なようです^^
こちらの記事に掲載した写真や細かい説明はパルコン建築記でも触れておりますので、もっと細かくご覧になりたい方は↓こちらの記事もどうぞ^^
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